Vol.004 プリント基板の達人

2003/03/06

銅箔について1

 銅箔は、通常18μmか35μmほどの厚さです。だいたいですが、女性の髪の毛
の1/4くらいの厚みです。銅箔は基板中を張り巡る回路パターンとなり、途中で
切れる事も、余分な所に接っすることも許されません。人間で言えば「血管」の
ような、とてもデリケートな素材です。

 製造過程では、板材やレジストなど他の素材とよくなじむように、様々な
工夫を銅箔に施します。4層基板を例に挙げて話を進めます。まず、下記の
層構成図をご覧下さい。合計で4枚の銅箔がありますので、4層となります。

  シルク
  ソルダレジスト
1.外装用銅箔 ・・部品面パターン層
  プリプレグ
2.内層用銅箔 ・・2層目(内層)
  コア材
3.内装用銅箔 ・・3層目(内層)
  プリプレグ
4.外装用銅箔 ・・半田面パターン層
  ソルダレジスト


 4層基板の内層となる「コア材」には最初から銅箔が上下に張りついてあり
ますので、エッジングを行い内層パターン形成を行います。その後、プリプレグ
と呼ばれる絶縁材料で上下を挟み、その上に銅箔を乗せます。簡単に言うと、
両面に銅箔が張り付いたコア材を、上下からプリプレグと銅箔でサンドイッチに
するのです。これを真空オーブンにいれて加熱加圧を行うと、プリプレグが
固まり、4層基板となります。

 ここで重要なのは、コア材に張り付いている銅箔と、プリプレグの"変わり目"
です。内層の銅箔は表面がつるつるとしていますので、このままではプリ
プレグと密着しません。そこで行われるのは「黒化処理(こっかしょり)」と
呼ばれる酸化処理です。

 黒化処理を行うと、銅箔の表面に5μm~7μmくらいの凸凹ができます。この
凸凹がプリプレグの繊維の中に入り込み、まるで船が錨を下ろすかのように
しっかりと密着するのです。「黒化」と言う通り、処理を行うと銅箔が真っ黒
になります。4層基板で、所々が黒い基板がありますが、これは内層の銅箔に
黒化処理を行っているからです。

 黒化処理には強アルカリ性の溶液を使用します。液を溜めた水槽に基板を
浸し、ジャブジャブと揺すり、ムラなく酸化させるようにします。飛び跳ねた
液がGパンにつくと真っ白く漂白されるほど危険な液ですので、取り扱いには
厳重な注意が必要です。基板を液につける時間も、秒単位の管理が必要です。

 素材同士が良くなじむように行う「工夫」は、実はとても大変な作業なのです。
次回は、銅箔とソルダレジストとの密着を良くするための「研磨」について
お話します。