Vol.010 プリント基板の達人
露光
現在の基板の状態は、銅箔にドライフィルムをラミネートし、パターンが
印刷されたフイルムを重ね合せてあります。この次の工程が「露光」となり
ます。
多くの製造工場では、露光工程で「自動露光装置」を使用しています。
露光とは、簡単に言えば基板に光(紫外線)をあてるだけの単純な工程ですか
ら、特別な技術は必要ありませんが、3点ほど気をつけるべき点があります。
1.基板とフィルムの間に空気を入れない、真空状態にする
2.露光時間を守り、効率的に作業を行う
3.光線を基板と垂直に入れる
自動露光装置は、この3点をしっかりと守るように工夫されています。
<工夫1> --空気を入れない--
基板とドライフィルムはラミネート工程で密着させていますが、
フィルムは重ね合わせているだけですから、空気が入り込んでいます。
空気が入り込んだままで露光すると、空気に当たった光が乱反射
してしまい、きちんとしたパターンを形成できません。
自動露光装置は、ガラス板(下部)と透明なビニール製のカバー(上部)
で基板をまるごと包みこみ、基板ごと真空状態にします。
さらに人間の手で基板をこすり、フィルムと基板の間に入り込んだ空気を
全部追い出すようにします。
気泡が無くなったのを確認した後、ガラス板をスライドさせて機械内部に
送り込み、光を当てます。光源のパワーにもよりますが、30秒~1分ほどです。
<工夫2> --効率的な作業--
露光装置の種類にもよりますが、ほとんどの装置には上下で2セットの
ガラス板があります。まず、上のガラス板に基板を乗せて真空にした後、
機械内部にスライドさせて露光します。
同時に露光が終了した下のガラス板が機械内部から自動的に出て
きますので、真空を解除した後、まだ露光していない基板に取り替えて
から、真空状態にしてスライドさせます。すると、先ほど送り込んだ上の
ガラス板が出てきます。
上下上下でリズム良く、露光時間もきちんと守れるようになっています。
<工夫3> --光線を基板と垂直に入れる--
自動露光装置には大きく分けて2種類あります。
A.点光源装置
装置の中に1つの電球(光源)があり、その1点から光を放射します。
光源が1点なので、点光源装置と呼ばれます。問題は、光源が一つ
しかないので、基板の部分によっては光が斜めに入り込み「ずれ」が
生じることがあります。
B.平行光源装置
点光源で問題となる「ずれ」を防止する工夫を施したのが、平行光源
装置です。光源は一つですが、フライアイレンズと呼ばれる特殊な
レンズと放物面鏡を組み合わせることによって、基板のどの部分にも
光線が垂直に入るように設計されています。
フライアイレンズとは、研磨されたレンズを長方形に切り出して、貼り
合わせたもので、照明の均一化に使用されます。ハエの目に似ている
ことから、フライアイと名づけられました。とても高額なレンズです。
露光が終了しますと、紫外線が当たったドライフィルムの乳剤層が化学
変化を起こして硬化します。硬化すると、次工程の現像を行う際に使用
される現像液に対して不溶性になります。紫外線が当たらなかった部分は
硬化しませんので、現像液に溶けてしまいます。これが現像の原理です。
次回は、現像工程の説明となります。