プリント基板の製造・設計・実装ならプリント基板のネット通販 国内シェアNo.1!のP板.com
ログイン サイトマップ よくある質問 検索

  1. プリント基板 P板.com TOP
  2. 無料メールマガジン(バックナンバー)
  3. 2009年以前
  4. Vol.039

Vol.039 プリント基板の達人

2007/07/11

< 第7回 >
プリント基板の品質保証について

皆さん。こんにちは。(有)実装彩科の斉藤です。
前回はプリント基板の検査にまつわる話をしました。
今回は検査よりも上位概念にあたるプリント基板についての品質保証について
お話してみたいと思います。

皆さんが品質保証から連想できるものは何ですか?
「保証書」と答える方が多いんじゃないでしょうか。

保証期間内に通常の使用方法で何かが壊れてしまった場合、保証書とともに品
物を買った店に持っていけば、無償修理か交換をしてもらえますよね。

しかし、ものを作っている側のもの(メーカ)にとっては、このような事態に
なると、収益が減るのでできるだけ避けたいわけで、色々な品質改善活動(品
質管理の一つ)を独自に展開しています。 

ところで「品質保証」と「品質管理」ということばがあります。似ていそうで
かなり違いますので先に教科書に書いてあることを示しておきます。

「品質保証」は、品質を保証できる(あるいは保証しようとする)仕組みを持
っていることで、「品質管理」とは品質上の目標を定めて、それに達するため
の取り組みを考え、作業(結果)を計測し、目標に近づけるためのマネージメ
ントとあります。
その他、より詳細な内容については別途書籍を参照していただくことにして、
今回実務ベースのお話を致します。

普段、プリント基板を発注される時はどのようなことをお考えになっているで
しょうか。
試作品へ適用する場合と、少量多品種製品へ適用する場合は、発注量が少ない
ということは共通ですが、品質保証という面では大分異なります。

試作品はいわゆるモックアップなので、電気的に接続されて回路が機能すれば
よく、過酷環境で使うわけでもなく、また、何年、何十年と稼動させるわけで
ないので形だけ出来ていれば良い訳です。特に海外基板メーカのサンプルと称
するものは完全にこの考え方で作られているので実製品へ適用すると危険です。

一般的に産業用製品に適用する少量多品種品は量が少なくとも品質がいい加減
で良いとはいきません。しかし、このたぐいの基板を作っているメーカは規模
がさほど大きくないことが多く、品質保証に掛けられる人員にも限りがありま
す。

一般的な、品質保証や品質管理を説いている著書には組織的な活動、試験方法
やツール、試験規格など様々なことが書かれています。しかし、理想的なこと
ばかりでは物事は進みません。

私が日頃訴えていることに「必要な部分には必要な信頼性を適正コストで」と
いうことがあります。

例えば、インクジェットプリンタ用のインクカートリッジにもプリント基板が
付いています。
この基板に寿命、3年も5年も保証しろということは不要でしょう。使い捨て
カメラの中に入っている基板も然りです。

プリント基板を発注される側の方(セットメーカや大学、研究機関等の方)は、
先ず、ご自身が発注した基板の使用環境(温湿度)と設計寿命、on/offの回数
が幾らであるかのご確認をされておくことを強くお勧めします。

この条件によって、本当に高度な品質保証体制を実行している基板メーカに
注文せねばならないか大きく差が出ます。当然、納期とコストにも影響します。

品質保証体制について、ドキュメントを整備するところまでは、お金を掛けれ
ば何とかなりますが、理想論を実行できるかは別問題です。
先ず、発注者側の方が自社の要求信頼性を明確にして、その20%程度安全率
を掛けた品質の基板を購入できる体制になっていることが望ましいと考えます。

初回取引の場合は、社外不良についてどの位の頻度でどのようなトラブルが
生じ、どのように対策したのか、通常、是正対策書のフォームがどの基板メー
カにもあるのでそれを適宜開示してもらい、発注側の安心材料に組み込むこと
が良いと思われます。この是正対策書を開示してもらえるか、つまり、信頼
関係を築けるかということが非常に大事になります。

それと、以前にもお話ししたと思いますが、スルーホールの断面観察(マイク
ロセクション)の写真を纏めてあるファイルを見せてもらうことが重要です。
数社のものを見れば、だんだん目が肥えて色々なことが分かるようになります。

品質保証にも品質管理にも両方に関係するのですが、「バスタブカーブ」と
いうものを聞いたことがありますでしょうか。

縦軸は不良率、横軸は時間で初期不良領域、偶発故障領域、磨耗故障領
域があります。初期不良領域では、納品直後の不良率は高いですが、だんだん
安定してきて不良率は低下します。偶発故障領域は正常に作られたものが突然
壊れる不良で(人間が事故に合うようなものです)、小さな不良率で一定に
推移します。磨耗故障領域は、物理的にあちこちが壊れるようになり、不良率
は大きくなります。この不良率のカーブがお風呂のタブに似ているのでバスタ
ブカーブと呼ばれています。ワイブルプロットという手法を用いると、より
詳細に状況を把握することが出来ます。

基板メーカとしては初期故障領域も偶発故障領域も両方の領域で不良率を下げ
るように努力しないといけないのですがやり方が違います。前者の初期故障
領域での不良率を下げるには、前回お話した様々な工程内検査の質を上げる
必要があります。元々、病気であるプリント基板が出荷されて、即、大病に繋
がるといったイメージです。出荷後、3ヶ月から半年位までの間に発病します。

したがって、言い換えれば、使い捨て系の3ヶ月持てば良いというアプリケー
ションには結構アグレッシブな作り方をしても何とかなるということになります。

偶発故障領域の不具合は、例えば、普段健康な人が風邪をこじらして、肺炎に
なり、お亡くなりになるようなものです。

この偶発故障利用域の不具合の発生確率については、χ2乗(カイジジョウ)
分布という統計学を用いることで推定が可能です。言い換えれば、その製品の
保守に掛けられる予算が決まれば、どの位の規模の信頼性試験をやれば良いか
を算出できます。つまり、サンプル数と試験時間が分かります。

χ2乗分布では、サンプル数と試験時間を掛け算したものを「コンポーネント
アワ」と呼んでいます。試験時間は試験サイクル数に比例します。
したがって、最近ではセットメーカの方が何千サイクルも試験をして合格する
ことを要求されることをよく目にしますが、試験サンプル数が少ない場合は
意味がないことになります。

通常、このような試験は相当な期間と費用がかかります。基板メーカは大手
セットメーカからの大口受注を取るために、やむなく試験に応じることもある
ようですが、その分日常の品質管理へのマンパワーが薄くなりがちなので、
現実問題としてこのようなやり方はいかがなものかと私は考えています。

このあたりの詳細について、現実問題として何をなせば良いかについて、この
8月に出版される、㈱技術情報協会「最新版カーエレクトロニクス技術全集」
の一章に執筆しましたので、ご興味がある方は私にご連絡ください。執筆者紹介
割引があるようです。

最後、PRになってしまって恐縮ですが、私が日頃の仕事をしている中では、
基板メーカが品質の維持、向上について努力はされているものの、セットメー
カ側の要求信頼性がどこまでを求められるのかを話されていないことを多く
見聞きします。

「必要な部分には必要な信頼性を適正コストで」をもっと掘り下げれば、
セットメーカと基板メーカ、さらに材料メーカも巻き込んでwin-win-winに
なるはずと考えています。
それでは、今回はこれで終わりに致します。