Vol.049 特集 『プリント基板メーカを選ぶツボ』
Check2「穴部の形状、ガラス繊維の構造」
皆さんこんにちは。(有)実装彩科の斉藤です。
今回は『プリント基板メーカ選ぶツボ』の第2回目、
Check2「穴部の形状、ガラス繊維の構造」についてお話いたします。
マイクロセクションでスルーホール断面を観察する時は、
色々な着眼点があります。スルーホールコーナ部の形状の次に目がいくのが、
視覚的には穴壁の凹凸だと思います。
「穴壁内のガラスクロスのほつれ」はその現象の一つです。
この項目をCheck2にしたのは、海外製基材特有の問題で、
中国など海外製基板を調達する時には注意が必要だからです。
皆さん、コストダウンのために海外製基板にはご興味が大きいと思います。
基材である銅張り積層板(CCL)は、板厚1.6mmの場合、
ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたもの(プリプレグ)8枚を重ね、
両面に銅箔を挟んで積層プレスしたもので出来ています。
ガラスクロスとは縦糸と横糸で構成される織物で、
糸はヤーンと呼ばれる細い繊維を数百本束ねたもので出来ています。
中国を主要とする海外製基板のスルーホール接続信頼性は、
ガラスクロスの一部が穴あけ時のドリル進入の衝撃でバラけて穴内に突出し、
そこにめっきが付くのでめっきの厚みが局部的に薄くなります。
そのためスルーホールの応力集中がめっきの薄いところに作用し、
断線に至ることがあります。
したがって、スルーホールの断面形状ではめっき厚の一部に、
穴内方向へヤーンが飛び出していないかをチェックします。
海外製基材に用いられているガラスクロスは、
縦糸と横糸の目が詰まっています(非開繊材)。
これに対し日本製は非開繊材を特殊な装置で縦糸と横糸の目を広げています
(開繊材)。これは、ガラスクロスの内部に均一にエポキシ樹脂を含浸しや
すくするための技術です。
さらに、ヤーンの1本1本の表面は、樹脂の密着を良くするため、
特殊な薬品処理を施してあります。
そのため、国内製基材は穴あけ時にヤーンがバラけることはありません。
ただし、板厚1.6mm用のタイプ7628ガラスクロス(開繊材)自体は、
コスト的に日本国内では生産しておらずほとんどが台湾製です。
穴内方向へヤーンが飛び出している基板をコスト的に、
どうしても採用せねばならない場合は、
緊急避難的にめっき厚を30μm程度にしておくことをお勧めします。
海外のスルーホールめっき物性は国内に比べると劣る場合が多く、
穴あけ品質もさらに劣ることが多いので保険です。
この条件にしておけば、製品寿命として、
一般室内環境で3~5年程度のものには使用できる経験的な感があります。
次回はめっき厚の話をします。