Vol.009 プリント基板の達人

2003/10/15

フィルムの作成方法

 前回は「どうしてフィルムが高いのか」について解説しました。今号では、
フィルムの作成工程を説明します。ペラペラで、どこにでもあるような透明な
フィルムですが、多くの工夫が施されています。まずは、フィルムの素材に
ついて、説明します。

 フィルムのベース(下図3層)になる素材はポリエステルです。ポリエステル
は耐磨耗性や耐久性に優れており、さらに吸湿性が低い。つまり、水分を
吸収せず、濡れても乾きやすい特性をもっており、フィルムとしては最適な
素材です。フィルムは、寸法が変化したら使い物になりませんので、水分を
含み難く、寸法が常に安定している素材が最適なのです。

 ベースの上には紫外線に感光する乳剤層(下図2層)があり、その上には
保護層(下図1層)があって、乳剤層を保護しています。ベースの下には、
ハレーション防止、静電気防止、耐傷性、潤滑性付与などを目的とした
バッキング層(下図4層)があります。ハレーションとは、光を物体に照射する
と輝いて反射する事です。要するに、最下部にバッキング層がある事で、
上部からあたる光線が反射するのを防いでいるのです。

  1層 : 保護層
  2層 : 乳剤層 (ハロゲン化銀)
  3層 : ベース (ポリエステル)
  4層 : バッキング層
 
 くどいようですが、フィルムは寸法の安定が命です。伸び縮みする素材では
ダメなのです。しかし、フィルム作成工程では、現像・定着・洗浄などに水溶液
を使用しますので、どうしても多量の水分を吸い、膨張します。ここでフィルムに
求められるのは、元のサイズにきっちりと戻る能力です。フィルムは、作業を
行う場所の湿度・気温が同じならば、水分を含む前と、一度水分を含み、乾燥
させた場合でも同等の寸法になるように計算されて作られています。

 それでは、フォルムの製造工程に進みましょう。
現在は、ほぼすべての工場で「LPP:レーザーフォトプロッター」と呼ばれる
機械を使用してフィルムを作成します。ガーバデーターをCAMソフトで
編集し、データをLPPに送れば、5分~10分ほどで1枚のフィルムが出来上がります。
全自動ですので、特に大変な作業はありません。
 
 フィルム作成の仕組みは、写真のフィルム作成とほぼ一緒です。
乳剤層には光をキャッチするハロゲン化銀が含まれており、紫外線が
当たると、ハロゲン化銀結晶が反応して、その光量によって潜像が形成され
ます。まだ潜像ですので目で見る事ができませんが、現像作業を行いハロゲン
化銀を還元する事によって、銀画像を形成します。次に酸により現像を停止し、
定着液によりハロゲン化銀を溶解して除去すればフィルムになるのです。

 ここまではすべてLPPが全自動で作成しますので、重要な点はこの後の検査
です。ここでパターンのショートや断線、ピンホールなどがあれば、このフィ
ルムで作成する基板は全枚数、不具合となってしまいます。目視による検査を
念入りに行います。

 さて、これでフィルムが完成しました。
ピカピカに研磨された銅箔に、ドライフィルムがラミネートされた状態で基板が
待っています。次はドライフィルムの上に、たった今仕上がったフィルムを
重ねて、露光の作業となります。

 次回は露光の作業について説明します。