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お客様の声 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター・fuRo 様

2017年5月

現在の不可能は未来の可能! 見たこともないロボットの開発ストーリーとは?

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター・fuRo(フューロ)のミッションは、「ロボット技術で未来の文化を創る」こと。2003年に全国初の「学校法人直轄の研究所」として誕生。原発や災害対応で活躍するレスキューロボットをはじめ、世に役立つロボットを数多く生み出しています。同センター上席研究員の奥村悠さんに、P板.comの基板を利用した最先端のロボット開発秘話や現在の事業のこと、今後の展望などについてお伺いしました。

奥村 悠 様

奥村悠 様 千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター・fuRo
上席研究員/モーションデザイナー

「fuRo」とは、どんな研究機関なのですか?

奥村さん fuRo(フューロ)は、2003年に全国初の「学校法人直轄の研究所」として、千葉工業大学に誕生しました。一般的な大学の学部学科付属の研究所とは違い、独立していて自由に動けるのが大きな特徴です。いわば、国でも大学でも企業でもない研究所ですね。学生の出入りがなく機密が守られているなか、さまざまな企業との先進的な共同開発も行っています(現在fuRoは千葉工業大学附設の機関となりましたが、これまで同様自由に活動できています)。
*fuRo=Future Robotics Technology Centerの略称。

fuRoの活動には4つの柱があります。(1)研究、(2)事業化、(3)ライフデザイン、(4)人材育成です。20年、30年先のテクノロジーを見越して、企業ができないようなロボット技術の研究開発をしています。ただ、研究するだけでは意味がありません。世の中に普及させていくことが大切です。そのため、開発した技術がうまく稼働し、人の生活を変えていくようなロボットの操作性やデザインにも力を注いでいます。さらには、ロボットをひとつの媒体として、ものづくりの楽しさ、大切さを次世代に教える活動も行っています。


原発対応版ロボット「櫻弐號(サクラニゴウ)」


未来の科学者たちにロボットを使って講義するfuRo所長の古田 貴之さん

ロボットはどのような人員体制で作られているのですか?

奥村さん 20人のスタッフのうち、所長や広報担当などを除き15人ほどの研究員がチームを組み、ロボットを作っています。モーター系、人工知能系など得意分野で一応の担当が分かれていますが、各々がトータルを把握できる知識や技術を持っているのでチーム構成は流動的です。わずか15人ですが、現在5つほどのプロジェクトが同時進行しています。

新作ロボットを発表する機会も多く、リリース日が近づくと徹夜体制となってしまうこともしばしばです。このように常に時間がない状況なので、基板を入手するP板.comの短納期サービスは非常に重宝しています。私が回路設計や基板の発注を担当しているのですが、「ウルトラクイックコース」のヘビーユーザーですね(笑)


「短期納期でこのリーズナブルな価格設定はありがたいです」(奥村さん)

それはありがとうございます! どのようなきっかけでP板.comをご利用いただくようになったのでしょうか?

奥村さん fuRoの前身である、独立行政法人 科学技術振興機構のロボット開発グループに居た頃は、なんと自家製で基板を作っていました。当時、基板を早く手に入れるには自家製でやるしかないと思い、500万円くらいかけて基板製造機、エッチングマシンなどの一式を買ったのです。ところが、基板づくりはエッチング用の薬品の扱いがとても大変で。早く入手したいのに、設計に1週間、製造に1週間はかかっていました。
「これはもうやっていられない」となり、2003年にfuRoに移籍したのがきっかけで、webで知ったP板.comに基板製造を依頼することになりました。その後、500万円の機械一式は出番がなくなり、ホコリをかぶってしまいました。機械も自分たちの時間も使わなくて済むうえ、短納期で思い描いた基板が届く! 本当にありがたいサービスだと思いましたね。


「P板.comに出会ったので、エッチング機は全然減価償却できていませんね(笑)」(奥村さん)

基板はどのようなロボットに使われているのでしょうか?

奥村さん 現在fuRoのホームページを開くと、トップページに2015年に出た最新機種の「Halluc IIχ(ハルクツー・カイ)」というゴールドのロボットが現れます。これは未来の乗り物のひな型となるロボットで、いわば昆虫や動物のように移動できる自動車です。8輪の脚(ホイール・モジュール)がさまざまな障害物を感知し、横移動や回転はもとより、車体を水平に保ったまま段差を踏破するなど高度な動きをします。


8脚で縦横無尽に動くこんなロボットが未来の乗り物になるかも!?
Photo: Seiji Mizuno

Movie : Kaoru Imafuku, Coordinate : maart Ltd.

この「Halluc IIχ(ハルクツー・カイ)」には、シャーシとなる長い基板が入っています。それがP板.comで注文した基板です。ハルクツー・カイの兄弟機種、2007年に発表した「Halluc II(ハルクツー)」*から見た目はあまり進化していないのですが、省配線化し軽量化を図ったことで、動作の確実性が格段に上がりました。また、RGB-Dカメラを搭載し、ジェスチャー認識までできるようになりました。
*Halluc II(ハルクツー)は2007年より7年間、日本科学未来館で展示デモされていました。

ロボットの中はとにかく配線が多く、コネクタごとにトラブルが起きやすいのですが、最近は配線をきちんと収納できる大きな基板を使うことで解決しています。P板.comでは1-Click見積で見積りがでないようなサイズの基板にも対応してもらえると聞きましたので、また相談させてください。軽量化や省スペース化を考えると、今後はフレキシブル基板にもトライしてみたいですね。

ロボット教育の教材にもP板.comの基板が使われているとお聞きしました。どんな取り組みをされているのですか?

奥村さん 文部科学省が指定した、先進的な理数教育を実施する高等学校「スーパーサイエンスハイスクール」(SSH)のうちの数校に出向き、ロボットを一から作るという講座をfuRoで受け持っています。講座に応募した高校1~2年の生徒が、「自らはんだ付けを行い、全て組み立ててソフトウエアも組んでロボットを動かす」という一連の工程を丸2日間で行います。


自分たちではんだ付けして組み上げて…こんなロボットが完成!

このロボット教材に関しては、機械設計、電気設計、プログラム、教科書まで全てfuRoが担当してします。肝となる丸い基板がP板.comの基板ですね。とにかくものづくりを面白いと感じてほしくて、使用する基板もできるだけポップな色を選ぶようにしています。

PC上でプログラミングができても、原理や工程を知らないのでは片手落ちです。自分で一連の流れを体験し実際に動いた時の喜びを感じてこそ、本当の技術が身につくと思うのです。毎回、生徒たちは目を輝かせて取り組んでくれています。SSH認定期間が終了したある高校からは、「自腹でキットを購入するので、ロボット講座を続けてほしい」と頼まれました。もはや伝統として受け継がれているようで、本当に嬉しいですね。大きなやりがいを感じています。


「もっと時間があれば、生徒たちに回路設計もしてほしいなと思っています」(奥村さん)

すばらしい取り組みですね。最後に今後の展望をお聞かせください。

奥村さん まず、ロボットの技術、知識が義務教育になるくらいまですそ野を広げたいと思っています。いまロボットに関心がある人はマニアックな人に限られています。もっと多くの人に「もしかしたら、これってロボットでできるのでは?」という視点を持っていただきたいのです。しかもできるだけ早く。ロボットの専門家が気づかない新しい発想が、社会を大きく変えるかもしれないのですから。現在の不可能は、未来の可能になるはずです。

実は、2020年東京五輪に向けて乗り物ロボットを実用化して街中を走らせるという構想があります。それができると、高齢者や障がいがある方も安心して街を回ることができます。すでに3輪モビリティ「ILY-A(アイリーエー)」というロボットの技術を投入した近未来型の乗り物が誕生しています。前方にレーザーセンサーが付いているので、決して人や障害物にぶつかることなく進みます。これはまだ重さもあり試作段階なのですが、オリンピックの頃には「〇〇まで行って」と告げると、その場所まで行く乗り物になっているかもしれません。


利用シーンに応じてトランスフォームする未来のモビリティ「ILY-A(アイリーエー)

fuRoは、「ロボット技術で社会に貢献する」ことを目的に設立しました。これからも「単に最先端のロボットの技術の探求をするのではなく、新しい価値観や文化、ライフスタイルをもたらすような世に役立つものを作る」研究開発を進めていきたいと思っています。「できるものを作るのではなく、できないものを作る」。それが、私たちの研究目的であり大きな喜びなのです。


「ロボット技術で社会を幸せにしていきます!」(奥村さん)

お忙しいなか、とても貴重なお話をありがとうございました。

ご協力いただきました未来ロボット技術研究センター・fuRo 所長 古田 貴之さんの書籍「不可能は、可能になる」(PHP研究所)のご紹介です。

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