第1回 LEDの基礎知識

著者:善養 寺薫  企画・編集:ZEPエンジニアリング

はじめに

小学校の理科の実験で、乾電池の正極($+$端子)と負極($-$端子)に豆電球の2本の電線を繋いだら光 りました(図1)。今どきの小学校ではLEDに代わっているかもしれませんね。LEDは豆電球と同じ方 法で点灯させてよいのでしょうか︖(図2)。

本連載では、全6回にわたって、LED照明電源を例に、CADの使い方から基板のしくみまで、基本の中 の基本を解説します。第7回目以降は、最新のKiCAD7を使いながら、実務に使える計測アダプタ基板 などを製作する予定です。

図1 豆電球を光らせるときは1本の乾電池に直結した

図2 LEDも豆電球と同じ回路でOK?

高効率&長寿命︕発光する半導体素子“LED”

LED(Light Emitting Diode)は、電気信号を光に変換する半導体デバイスです。発光ダイオードともいいます(図3)。

図3 LEDのいろいろ

電球はフィラメントを赤熱させることで光らせますが、LEDは電気エネルギーを直接光に変換するため、電力から光への変換効率が高いのが特徴です。寿命が圧倒的に長いのも大きなメリットです。
青色LEDが発明されて以来、イルミネーションや信号機、車載用ヘッドライト、室内照明、懐中電灯、カメラのフラッシュ、液晶のバックライトなど、その応用は爆発的に増えました。青色光の波長によって励起される蛍光体を組み合わせることで、照明に欠かせない「白色」のLEDを実現できたからです。

LEDは照明以外にも利用されています。システムの動作状態を示すインジケータ、フォトカプラなどの信号の絶縁、赤外線リモコンなどの無線データ通信などです。

2つのキーワード

図4に示すのは、LED“OSDR5113A”(OptoSupply製、赤色)の使用条件が記されたデータシートです。メーカが公開しています。データシートには、たくさんの技術用語が記されていますが、その中から、重要なものをピックアップして解説します。

図4 LEDの使い方はデータシートから正しい情報を得る

DC Forward Voltage(直流順方向電圧)

DC Forward Voltageは、$V_F$というパラメータで表されます。LED(Light Emitting Diode)は、その名前のとおりダイオードの一種です。アノード(A)に正極($+$)、カソード(K)に負極($-$)を接続すると、電流が流れて光ります。
この電流の向きを順方向といい、このときLEDに加わる電圧を「順方向電圧」、流れる電流を「順方向電流」といいます。逆に、アノード(A)に負極($-$)、カソード(K)に正極($+$)を接続すると、電流は流れず光りません。この電流の向きを逆方向といい、このときLEDに加わる電圧を「逆方向電圧」、流れる電流を「逆方向電流」といいます。
LEDに電流が流れると、電気エネルギ-光エネルギ変換が行われますが、図5に示すように、ダイオードと同様の性質をもつため、ある一定以上の電圧を加えるまで電流が流れ始めません。LEDも光らせるには、$V_F$以上の電圧を加える必要があり、必然的に、$V_F$以上の電圧を出力する電源が求められます(図6)。

図5 LEDは$V_F$を超えると電流が急増する特性をもつ

図6 LED用の電源は$V_F$以上を出力できる必要がある

一般的なシリコン・ダイオードのしきい値電圧($V_F$)は、0.6~0.7Vです。赤色LED“OSDR5113A”のデータシートには、「最大2.5V」と記されています。乾電池の電圧は1.5Vなので、豆電球と同じ 1本では不足です。2本以上を直列に接続する必要があります。

Absolute Maximum Rating(絶対最大定格)

一瞬でも超えると壊れる可能性のある値です。半導体や電子部品のデータシートにもこの項目は必ず記載されています。
直流順方向電流の絶対最大定格の記載から、このLEDに流すことができる順方向電流の最大値は“30mA”です。電源とLEDの間に電流を制限する抵抗が必要です。抵抗がないと、絶対最大定格を超える電流が流れて、LEDが発熱して破損します。

電流制限用抵抗の値$R_{led}$は、電源電圧($V_{DD}$)に$V_F$(=2.5V)を考慮して、次式のオームの法則から求めます。
\begin{align} R_{led}=\dfrac{V_{DD}-V_F}{I_{led}} \end{align}
ここで、$I_{led}$は順方向電流[A]です。

電子部品の定数は目的しだい

電源電圧($V_{DD}$)が3V(乾電池2本直列)なら、抵抗 $R_{led}=$25Ωを挿入して、順方向電流($I_{led}$)を20mA程度に制限します。現実には、E24系列の25Ωに近い、24Ωまたは27Ωを使います(図7)。

図7 壊さない程度にできるだけ明るく点灯させたいなら、電流制限抵抗は24Ωになる

抵抗やキャパシタの定数を決めるときは、在庫する電子部品の種類が増えないようにします。購入コストや管理コストが下がるからです。

赤色LEDは、電源スタンバイ状態を示すインジケータによく利用されています。照明用ではなく、光っていることが視認できればよいので、電流制限抵抗を1kΩなどと極端に大きくして輝度を低くしても、インジケータとしての役割を果たせば問題ありません。しかも省エネ効果も得られます(図8)。実際の設計では、目的を考慮して定数を決めています。〈善養寺 薫〉

図8 LEDが視認用なら電流制限抵抗は24Ωではなく1kΩのほうがよい

著者:善養寺薫/Kaoru Zenyouji(株式会社ディスクリテック)
企画編集:ZEP エンジニアリング株式会社
主催:株式会社ピーバンドットコム

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