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1.0mm、0.8mmピッチBGAからのパターンの引き出し方

BGA(Ball Grid Array)は、電極が格子状に並んでいるため、パターンの引き回しは難しいと思われがちですが、基礎的な引き出し方が分かれば、通常の部品と同じように設計できます。今回は、端子ピッチ「1.0mm、0.8mmピッチ」のBGAを例に、引き回しやビア・DRCの一例を記載します。

1フットプリント、パターン幅/間隙、貫通ビア

BGAのフットプリント、パターン幅/間隙、貫通ビアの一例を記載します。

フットプリント

フットプリントのサイズは、使用部品や基板・実装仕様などで変わるため、一概にこのサイズとは言い切れません。ここでは、設計でよく見る「ボール径 - 0.1mm」サイズのフットプリントを紹介します。
・BGAの「ボール径 - 0.1mm」サイズ(※ ボール型の場合のみ。フラットなど形状は範囲外)

※上記は参考数値です。使用部品や製造・実装工場の仕様により変わります。

パターン幅/間隙、貫通ビアサイズ

標準的なパターン幅/間隙、貫通ビアサイズ例を記載します。

1.0mmピッチ BGA
(ピン間1本)
1.0mmピッチ BGA
(ピン間2本)
0.8mmピッチ BGA
(ピン間1本)
パターン幅/間隙0.15/0.150.1/0.10.1/0.15
VIA サイズ
[穴径/ランド径
/レジスト径]
ø0.3/ø0.5/ø0.0 ø0.3/ø0.5/ø0.0 ø0.15/ø0.4/ø0.0

※上記は参考数値です。使用部品や製造・実装工場の仕様により変わります。
※BGA周辺箇所の設定です。

ポイントは、BGA直下のビアはレジスト開口しない点です。これをすることで、BGA直下でのはんだショートの可能性を下げることができます。BGAは、実装箇所の目視確認やはんだコテでの修正は出来ないので、実装不良のリスクを避けることが重要になります。

2DRCの設定例

標準的なBGA周辺のDRCの一例を記載します。

〔標準的なDRC設定例(1.0mmピッチBGA、ピン間1本)〕

配線ビアBGAパッドベタドリル
配線0.15
ビア0.150.2
BGAパッド0.150.20.2
ベタ0.30.30.30.3
ドリル0.2750.50.2750.5

〔標準的なDRC設定例(1.0mmピッチBGA、ピン間2本)〕

配線ビアBGAパッドベタドリル
配線0.1
ビア0.10.2
BGAパッド0.150.20.2
ベタ0.30.30.30.3
ドリル0.20.50.20.5

〔標準的なDRC設定例(0.8mmピッチBGA、ピン間1本)〕

配線ビアBGAパッドベタドリル
配線0.15
ビア0.150.2
BGAパッド0.150.150.2
ベタ0.30.30.30.3
ドリル0.2750.50.2750.5

※上記は参考数値です。使用部品や製造・実装工場の仕様により変わります。

3パターンの引き出し方(基礎編)

パターンの引き出し方は、ビルドアップの時とほぼ同じです。各列(行)ごとにパターンを引き出します。大きな違いは、「パッドの対角にビアを打つ」「ビアのランド(穴)が全層にある」点です。下記に一例を記載します。

4パターンの引き出し方(応用編)

基礎的な引き出し方は誰でも簡単にできる反面、層数が多くなったり信号が混在しがちです。実際の設計では、層数を含む基板仕様や配線に制限があるため、工夫が必要になります。BGAの一部分を例に説明します。

1.信号毎にグループ分けする

アートワーク設計全般に言えることですが、まず信号毎にグループ分けをします。ここでいう信号には、電源・GNDも含みます。色を付けることで、どの信号をまとめて配線するか、電源・GNDで何層必要かを視覚的に確認できます。

2.周辺部品の配置位置を決める

BGA周辺は、通常よりもパターンが混むことが多いので、大まかにでも部品配置します。引き回し後に部品を配置した場合、全ての配線を引き直す可能性が高くなります。なお1と2の順番は、設計者の好みで替わります。

3.小分けにして配線する

信号のグループ分け、部品配置をしたことで、まとめて引くパターンのイメージが付きやすくなったと思います。ただ、大量の信号を一度に引き回すのは、アートワーク設計になれていないと非常に大変です。そこで、引き回すピンを分割し配線を引き出します。信号の割り当てでも変わりますが、一般的には部品を4分割や8分割にして考えると良いでしょう。

配線の引き出し方や開始箇所は十人十色ですが、一般的には電源・GNDや重要な配線から考えます。引き出し方に焦点をあて作業を進めます。

電源・GNDのピン位置を確認して、何層必要かを計算します。今回は、電源が2種類、GNDが1種類あります。GNDは1層で足りそうです。問題は電源です。一番簡単なのは、種類ごとに層を分けることです。ただピン振りだけで判断すると、2種類の電源ピンは綺麗に分かれています。ビアの打ち方次第では、電源も1層で足りそうです。

次に、重要な信号線を考慮しつつ配線を開始します。一般的に重要な配線を優先して配線しますが、他信号と混在している場合は、重要な信号だけを配線することは困難です。この場合は、他の信号と同時に引き出しながら、特別な処理(GNDガード、間隙確保など)を実施します。

ここからは、試行錯誤をしながら上記作業を繰り返します。基礎的な引き出し方を基に、NCピンの空きスペースなどを上手く使って配線を引き出しましょう。一例として、部品面・はんだ面で引き出した画像を掲載します。

最後に、BGAから配線を引き出した後は、通常の仕様で設計をすることを心がけましょう。BGA箇所と同等の仕様で配線をした方が、設計者の作業効率は上がります。ただし、後工程の作業効率や歩留まりなどを上げる場合は、通常の仕様の方がよくなります。前工程を担当する方が後工程を意識して職務をすることで、よりよい製品ができます。