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ビルドアップを用いたBGAからのパターンの引き出し方
製品の小型化要求に応えるため、小型パッケージやビルドアップ基板を選択する場面は多々あります。要求事項が高くなるほど、アートワーク設計は製造工場の最小仕様に近づくことになりますが、それはお奨めできません。基板の価格や品質に影響が出るためです。本項では、0.5mmピッチBGA(図1)を例にし、非貫通ビアを使用した単純なパターンの引き出し方を説明します。
1フットプリント、非貫通ビアの数値
BGAのフットプリントと非貫通ビアの一例を記載します。
フットプリント
図1のBGAを例に、ビルドアップ設計での標準的なフットプリントサイズを記載します。
<フットプリントサイズ>
・パッド径:φ0.35mm
・レジスト径:φ0.25mm
・メタルマスク径:φ0.25mm
本項では、レジスト径よりもパッド径を大きく設定する「オーバーレジスト」での設計を例に説明をします。理由は、最後の項で説明します。なお、フットプリントのサイズは、使用部品や製造・実装工場の仕様により変わるため、本項の数値はあくまでも参考として留めてください。
ビルドアップで使用するビア
ビルドアップ設計で使用する、標準的な非貫通ビアのサイズを記載します。
レーザービア/ ランド | Φ0.1/0.3mm |
---|---|
Φ0.1/0.275mm | |
Φ0.1/0.25mm | |
Φ0.08/0.23mm |
ベリードビアホール/ ランド | Φ0.3/0.6mm |
---|---|
φ0.3/0.5mm | |
φ0.25/0.5mm | |
φ0.2/0.5mm | |
φ0.2/0.45mm | |
φ0.15/0.4mm | |
φ0.15/0.35mm |
なお非貫通ビアは、使用する層構成により設定が異なります。例えば、「2-2-2 スタガード」の層構成を使用した場合は、下記のビア設定が必要となります。
・レーザービア(LV):1-2層、2-3層、4-5層、5-6層用 非貫通ビア
・ベリードビア(BH):3-4層用 非貫通ビア
・スルーホール(TH):1-6層用 貫通ビア
2層構成ごとのビアの打ち方
層構成でビアの打ち方、設計方法が変わります。2種類の層構成を例に、打ち方の違いを記載します。
ビルドアップ基板などの非貫通基板は、層構成により価格や納期、品質、設計難度が変わります。これらは、使用する層構成が大きく影響します。よく選択される「スタガード」と「フルスタック」2種類の層構成を例に、設計難度に大きな影響を与えるビアの打ち方を説明します。
2-2-2 スタガード
スタガードの特徴は、隣接する非貫通ビアの位置が一定距離ずれている点です。基板の価格は抑えることができますが、フルスタックに比べビアを打つスペースが大きくなるため、設計難度は高くなります。また、一箇所でもビア位置が重なっていた場合は、後述するフルスタックでの製造となるため、設計の際には細心の注意が必要です。
2-2-2 フルスタック
フルスタックの特徴は、隣接する非貫通ビアの位置が重なっている点です。設計スペースは抑えられますが、基板の価格は高くなります。
下記に標準的なスタガード、フルスタックの設計仕様と層構成ごとの製造費用と設計難度の比較表を記載します。
層構成 | 費用 | 設計難度 |
---|---|---|
6層貫通 | 安 | 難 |
2-2-2 BHなし スタックなし | 中 | 中 |
2-2-2 BHなし スタックあり | 中 | 易 |
2-2-2 BHあり スタガード | 中 | 中 |
2-2-2 BHあり フルスタック | 高 | 易 |
3BGAからの引き出し方(基礎編)
BGAからの一般的なパターンの引き出し方を記載します。
BGAは狭い領域にピンが集中しているため、パターンの引き出しに難儀します。そのため、最初はBGAからの一般的な引き出し方を覚えることが必要です。
本項は、図1のBGAを例にパターンの引き出し方を記載します。なお、層構成は「2-2-2 フルスタック」を使用、信号の種類を考慮しておりません。
(1)BGAを4等分する
まず、BGAの中心からパッケージを4等分し、その中の1つの領域からの引き出しを考えます。注意点として、4等分するために引いた補助線外には、パターンがはみ出さないようにします。
(2)1列目を引き出す
ピンの1列目には、パターンを阻む部品パッドがありません。1層でパターンを引き出します。
(3)1列目以外のピンにレーザービアを打つ
2列目以降は前列のパッドが壁になるため、1層ではパターンを引き出せません。そこで、1-2層用の非貫通ビア(以下、1-2 LV と呼ぶ)を打ちます。
(4)2列目を引き出す
「1-2 LV」を打ったことで、2列目は2層でパターンを引き出せます。
(5)3列以降のピンにレーザービアを打つ
3列目以降は、前列のビアが壁になりパターンが引き出せないため、2-3層の非貫通ビア(以下、2-3 LV と呼ぶ)を打ちます。なお、今回はビアをずらすスペースがないため、フルスタックでの設計を選択する必要があります。
(6)3列目を引き出す
3列目は、3層でパターンを引き出します。
(7)4列目のピンにベリードビアを打つ
4列目も前列のビアが壁になりパターンを引き出せないため、非貫通ビアを打ちます。ただし、今回選択した層構成「2-2-2 フルスタック」では、「3-4層用の非貫通ビア(以下、3-4 BV)」は「1-2 LV」「2-3 LV」とビアの大きさが異なるため注意が必要です。 なお、層構成【3-2-3】を選択すれば、レーザービアのみでパターンを引き出せます。
(8)4列目を引き出す
4列目は、4層でパターンを引き出します。
(9)他の領域も同様に引き出す
他3つの領域も、同様の方法でパターンを引き出します。 これで、全パッドからパターンを引き出すことができます。
4レジスト開口の仕様
レジスト開口と貫通ビアを使用した場合の補足説明を記載します。
オーバーレジストを選択した理由
パッドサイズの銅はく開口面積を揃えるためです。狭ピッチ部品ほど、銅はく開口面積の差は実装不具合の大きな要因となります。BGAは、はんだ付け箇所が目視で確認できないため、より慎重な設計が必要です。
オーバレジストを選択すれば、パターンの有無に関わらず、銅はく開口面積を一定にすることが可能です。
オーバーレジストを選択しない場合の注意点
部品のパッドサイズを「全ピン」同一にすることです。上でも記載しましたが、パッドサイズが不同になることは、実装不具合の大きな要因となります。
パッドサイズが不同になるのは、部品パッド上の一部にビアを打つ時が多いです。パッド上にビアを打つ場合は、部品のパッドサイズとビアのランドサイズの大きさを確認しましょう。ビアのランドサイズが大きい場合は、ランドサイズが不同になる可能性があります。
貫通ビアでの設計・製造は可能か
本稿では、部品実装などの後工程、使用期間、歩留まりなど、安定したスペックの基板をお届けすることに重きをおき、非貫通基板での説明をしました。
考え方は十人十色で、「BGAのピン間からパターンを引き出したい」「貫通ビアを使用したい」という方もいらっしゃると思います。結論から記載しますと製造は可能です。ただし、特別な仕様が必要なため、通常の貫通基板に比べれば大変高価になる点、製造先への仕様の確認などに注意が必要です。